Like Sugar&bitter chocolate  邦ドラマと映画の甘くてちょっとほろ苦い感想雑記。けっこなんでも飛び出すごちゃまぜブログです。お暇つぶしになれば幸い。ヾ(≧∇≦)
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2014*10*21(Tue)
ちーちゃんはちょっと足りない 阿部共実著 感想
タイトルからしてちょっと残忍である。
読後に改めて振り返れば、そんな視点であるから主人公は苦しいのだ。

タイトルに騙されてはいけない。絵柄に騙されてもいけない。冒頭4話までのつまらなさにめげてもいけない。
中盤からの斜め展開が冴えわたる一品である。


色んな意味で悶々とする漫画でした。うわーってなる。
とにかく強い我の物語。
何故そんなに欲望に忠実であれるのだろうと、羨ましくさえ思ってしまう。
自分の十代は、こんなにも見境なしであっただろうか。

この頃の年代って、もっと拡散的で
一つが報われなくても、同時に様々なものを求めてもいて
もっと色々なものに目映りするとも思うんですが、登場人物たちは平等に欲望に忠実だ。
(最も、一度捕われてしまった欲望には、稚拙なまでの盲目的執着が
回避出来ないっていうリスクは、確かにあるかも)


逆に言うと、何がこんなにも彼女たちを満たさないのであろう。
自らの枯渇するような感情を、こうも際限なく主張出来るのであれば
それだけで、彼女たちは充分な幸福の中に在る気がする。
少なくとも、私は、こんな風に自我を解放する生き方はしてこれなかった。
欲しいものを欲しいと言うことは、抑制されていた。

そんな、自制と欲望の歪みを、思う存分曝け出す漫画である。


そんな風に、ただ一つの飢餓を、焦る様に訴えているからこそ
ここで描かれる青春時代は燃焼し
物語としては、その狂気染みた末路が煮詰められていて、素晴らしい。
同時に、思春期を超えた大人に対しても
目まぐるしいまでの毎日が与えられず、燻ぶり、その何もかもが駄目だという絶望感や劣等感が
妙に胸に迫る造りになっていると思う。

この物語は、ある意味、欲に捕われた少女たちの顛末だ。
二つの結末を見せて、読者に問い掛ける。「何を以ってあなたは満たされるのか?」

油断して軽い気持ちで読み進めていったから
読後に知らしめられた、胸の中に残るこのモヤモヤ感が、もう!もう!ぐわってなる。
胸を強く締めつける。


ただ―――ーそういうテーマ的な部分は息を飲むのですが
物語(漫画)的には少々詰めが甘い。
そういうテーマを意識していないと、全体的に手緩くて、日常に呑まれて、ぼやんと終わる。
なら、もっと鮮烈な堕落の世界を見せてくれても良かったのではないかとさえ思う。
堕落していく末路そのものが、テーマじゃないからでしょうか。
そうしたらもっと大々的に傑作と評価できたんですが。

飽くまで、この作品が面白いのは、その内容そのものではなく
作風とテーマであることは、確かだ。

ちょっと子供っぽく平坦な絵柄なので、表紙を見ただけで敬遠する人が多数いる気がする。
でも、中身はまるで裏切る内容です。


具体的な感想。

この作品の一番凄い所は、そのタイトルだと思った。
ちょっと色々未成熟な、ちーちゃんと呼ばれる女の子を、描いたものですよ、という
作者からのメッセージかと思いきや
これは、彼女をちーちゃんと愛称で呼ぶ、タイトルにすら出ないもう一人の少女の枯渇の物語だ。

しかも、物語も、冒頭4話はこのちーちゃんという女の子を主人公として
彼女の視点で話が進められていく。
そのサディスティックな切り口が、もう既に残酷だ。
世界は“私”が中心ではないのだ。


おかげで、読み手もすっかり騙されていく。

前半。
少女たちが自覚して足りないと騒ぐのは、物欲だったり自己顕示欲だったりと
とにかく我が強い。
ぎゃあぎゃあ騒いでは、あれが欲しいだの、これが足りないだの、やかましく、美しさの欠片もない。
この辺が実はちょっとイラつく(笑)
ギャグテイストで軽く明るく、話は進むんですけど
そもそも私はこういうノリがイマイチ得意ではない。単純に不満を逆撫でされるだけだった。

・・・がっ!

やがて気付く。
世界の主役は、結局、ちーちゃんみたいな極彩色の女の子なのだ。
良くも悪くも、世界の、クラスの中心は彼女にあって、みんなの注目を引き、
記憶に残ることで存在を肯定される。

ごく普通の、何も特徴を持たない、平凡な少女は
主役にすらなれないし、記憶にも残らない。
大差ないということは、この狭い空間では要らないと同義である。
ナツの立ち位置は、直接的なイジメよりも抉る。


そういうことを、ほんの少しの感情の温度差で見せ付けてくるから、しんどい。
あまりに些細なことなので、誰も気付けない差だ。
でも、確かに差は存在していて。
ワザと嫌ったり、いじめたりしている訳ではないから、残酷なのだ。


タイトルに含まれている「足りない」というキーワードはすごく重要で
その、本当に足りない部分(メインテーマ)を隠すためであろう、ちーちゃんには
露骨に足りないものを付与させている。
お小遣いが8円しかないとか、テストの点数が23点だとか
色んなものが“足りない”
本編では一度たりとも触れられてはいないが、恐らく知的障害の女の子で
情報も文化も遅れている地方の田舎で、質素で地味な学生生活を送っている
そんな平凡な中学生の、ほんの数ヶ月のお話が舞台だ。

恐らくそれもまた、巧妙に計算された設定なのだ。
そういう即物的なものばかりに読者の視点を持っていかせて
ラストのオチを見せた時、静かに問い掛けるんだ、「足りないものは満たされたか否か」

本当に足りないものは、そんな物欲ではないと持っていくための
壮大な嫌味なのだと思う。

中盤、高価な物を身に着けることで、世界が変わると本気で期待したナツの淡い気持ちを
日常と言う名の変わらない風景が打ち砕く瞬間は、身に余る。
無下に不発に終わらせるそのネタは、決して人的な作為などではない。
誰も何も悪いことはないんだ。
誰に否定される訳でもない、無関心という仕打ちが、実に過酷で
己の傲慢や、本質の薄さなどと思い知らされる。



そしてようやく物語はクライマックスへ。

本作メインの、ちょっとした出来事――盗難――が起きた。(こんな程度がメインなんだよ!)
ここから、ようやく、本当の主人公の物語が始まる。
一見、軸がブレたかのようにも捉えられるこのシフトは
実は、その前4話が壮大な下地になっていたことは、後になって気付く。


ちーちゃんは、ナツのためにお金を盗み
ナツは、欲しくても、その瞬間までは常識的に我慢していたのに
「あげる」と言われた時、それが盗んだ金であることを薄々感づきながらも、受け取ってしまう。

最後の誘惑に、勝てなかった?
いや、自分が惨めだからこそ、差し出されるこの位の褒美は許されると思っただけだ。
「私だってたまには好きな物を買ったっていいでしょう?」
その自己肯定する根拠が、息詰まる。
傲慢な我儘などでは、決してないんだ。そこまで彼女を追い詰めた背景が別にある。
それこそが、前半ダラダラと描かれた、あの4話だ。

そのための布石として、前半、足りないという表面的なものが、色々紹介された訳か。
その欲を、足りない足りないと明るくホザいている間は、健全だが
一旦引き金を引いてしまうと、欲は濁り、歪み、取り囲む・・・。

思えば、散々イライラさせられたことさえ、作者の思う壺だった。
素直に笑えた人にも、イラついた人にも
そこに反応した時点で、とにかく下地が整えられてしまっていた。くっそぅ。成程~。


ただそれだけで、ナツの運命は大きく変わって行く。

その盗難事件を発端に、二人の欲望には、正反対の結末が用意される。
表だって、欲を隠さなかったちーちゃんは、ベクトルが外向きに。
裏で密かに罪を呑み込んだナツは、ベクトルが内向きに。
その道が、真っ二つに分かれていく。

ここからのナツの、加速度的にネガティブになっていく発想は、もう堕落と自壊に染まり
たまんない。
怒涛のように歪んでいくナツの被害妄想から卑屈な思考まで
よくもまあ、的を絞った言葉をここまで並べ立ててくれました。

思考回路が否定的な人って、正しくこんな感じである。(私のことだがw)

でも、盗みが許されると思っていた訳でも、褒美の品が欲しかった訳でもない。
本当は、報われない自分を、少しだけ満たしたかっただけなのだ。
それの、どこが罪と言えるだろう。

でも、欲は確実に浸食する。内向きに。



私に言わせれば、ちーちゃんも、ナツも、全然足りなくない。

でも、ちーちゃんを、傍から見ていて
「この子(ちーちゃん)はちょっと足りない」などと感性を持っているから
ナツは暗闇から抜け出せない。
他人のことを、ちょっと足りない、なんて目線で見ているから、本質が見えないのだ。
確かに、その角度からの視点では、ちーちゃんは「足りない」かもしれないが
別の角度から見れば、充分満たされている。

傍に居てくれる友人がいるし、無視されないし、気に掛けてくれる。
何より、運命もまた、彼女の味方だ。
最後まで読めば、ちーちゃんこそ恵まれた環境に居ることに読者も気付かされる。

でもナツは気付けない。

ちーちゃんはちっとも足りなくないということに気が付かない。
同時に、自分自身の本当に足りない歪んでいる部分と驕りに、目が行かない。
ナツに、唯一足りないものがあるのだとすれば
この俯瞰する視点だ。


この辺の、じわじわとした説得力が、とにかくすごく上手い。
孤独と、異物感を強めていく思考が、とにかくすごい。
特に強調して露骨に描いている訳じゃないだけに、深層心理下で理解させられていく感じ。
繰り広げられている、下らない日常など、所詮「表向き」なのだ。



その明暗が天と地ほど別れた、二人の末路。

ちーちゃんの方は、あからさまにバカ正直なだけに
主犯であるにも関わらず、叱られ、謝罪し、許される、という
単純でありながらも社会システムの、健全な規分律を享受していく。

実行犯であるにも関わらず、ごめんなさいと一言伝えれば
仲間は許す。世間は許す。
そうして、誤解も解けるし、絆も出来る。
それは、さながら、良くある青春群像であり、甘酸っぱくも爽やかで、王道路線な結末だ。
ここで終わっておけば、何てことはない、一つの青春漫画で充分通る。

が、そこにナツの姿はない。

ナツには、その機会は与えられなかった。
実行犯ではないにも関わらず、一番の、罪の底へと堕とされていく。

ならば、何故ナツはタイミングを逃したのか?
盗んだ金を使ったことで後ろめたくなり、自分を責めている、ちゃんとした女の子だからだ。
その重さから、彼女は、罪から逃れることも、受け容れることも、出来なくなってしまった。
・・・・生真面目なんですよね、要は。
そして、保健室に逃げ込んでいる内に、チャンスは過ぎ去って行ったという悲劇。

それをまた、誰も伝えないし、話さない。
この顛末って・・・・っっ!!!

何この、ナチュラルに非道な感じ!
誰も悪くない。でも確実にナツの心を抉るこの熾烈な仕打ち。

罪の重さを知り、逃げ回ってただけのナツが、救済の機会を失い
恐らく、盗難という罪の重さを今ここで初めて知り
また、恐らく盗んだことよりも叱られたことにショックを受けただけのちーちゃんが
無邪気にも陽の当たる道を赦される。

自覚しているがために、苦しみが生まれる。
ちーちゃんは自覚がないから幸せで居られる。自覚ある者に救いはないのか。
人の幸せってこんな所で決まってると?

なにそれー!!
惨い・・・・むごすぎて、辛い・・・。
運命って時に過酷だ。


じゃあ何?
ナツは保険室に逃げ込まなければ良かったのか。
ちゃんと授業は受けましょうってこと?
逃げている人間には、救われる価値もないってこと?
傷ついたナツが悪いってこと?

結局、レールの上に乗っかっている優等生だけには優等生的で利口な救済が与えられる。

色んな意味で、エグイ結論を叩きつけられる。
騒動の後になって、母はお金をくれるけど
そのタイミングの悪さと仕打ちの辛さも、身に染みる。
「もうさ。遅いんだよ。こんなのもういらないんだよ」

この、タイミング的にも最悪な非道さ。
惨めになり、心を突き刺さされ、抉られていくナツの境遇が、もう静かに息を詰まらせていく。
運命もまた、レールの上に乗っている人間の味方なのだ。


直前の、ちーちゃん側の仲直りが、実に青春劇らしく清らかに眩しく鎮静化していっただけに
その対極にある彼女の人間感情が、反比例的に見えてくる。
この対比のさせ方が、芸術的だ。

子供らしい、直前のクライマックスで終わらせておけば、実に爽やかな物語であっただろうに。
そこで敢えて終わらせない。
模範的な規分律が、ここで一気に熱を帯びた人間の話になって、温もり(人間臭さ)を出し
実に生々しくドロドロした社会の話との鏡像に擦り変わる。
なんて手法!


ナツを、業や欲に塗れた、薄汚い少女だと、人は思うか?
醜い感情を赤裸々に内包し、鬱屈としながらも、打算で生きる彼女を、卑しいと思うか?

「どうせみんな私が嫌いでしょ」「私はすべてに否定されているんだ」

彼女の底知れぬ孤独と渇望を、彼女の強欲と自己責任して処理するなんて、出来ない。
この、変われなかった少女の、救われなかったもう一人の少女の行く末で締めくくられるラストは
あまりに可哀想で残酷な気がして
直前の爽やかな友情物語など、今となっては酷く陳腐にさえ思わせる。
社会はそうして構築されているのだと、機械的な規律を見せつけられただけのように写る。

罪を犯したら償えば良いんでしょ、と安易に結論付ける数多の他作品の隙間を縫って
罪を抱える少女のその後の方を描いたことで
逆説的な哲学が見え隠れする気がした。



そのラストシーン。
議論の別れるところだとは思うが、密林のレビューでは「バッドエンド」だという解釈が多いが
本当にそうだろうか?
私には、この温い生活における、主人公にとっての最大のハッピィエンドだったと思える。
この辛しょっぱい幸せは、人生でたった一度訪れる青春の、最大の贈り物だ。

繰り返しになりますが、ナツも、本当は全く足りない女の子ではない。
学校と言う閉鎖的空間で、常に傍に居てくれる存在が居るということが
どれだけ幸せなことか。
約束も、言葉もなくても、なんとなく傍に居るという存在が
どれだけ貴重で、どれだけ満たされるものか。
物欲的に足りないものばかり目移りしている幼い視点では
この貴重さは分からないんだろう。
その意味では、確かにここで言う幸せとは、客観的なものでしかない。

クラスで友達もいなく、孤立していた私にとっては、ずっと、喉から手が出るほど欲しいものだった。
その意味では私も、確かに飢える程に求めてもいたのだ。

救われたちーちゃんと、救われなかったナツ。
そこに相互理解はなく、相対的な大差もない。

双方誤解したままで、でも、とりあえず今は、隣に居る。
ちーちゃんは変わらずナツを『認識』してくれるのだ。他のクラスメートと違って彼女だけは。
この先、ちーちゃんが真実を知り、ナツがちーちゃん側の事情を知る日が来ても
恐らく、ナツが逃げようとしても
このラストシーンのように、まるで簡単に、まるで何でもないことのように
恐ろしくも容易く、ナツを救ってくれる。

「ナツ!」って呼んで、ちーちゃんはナツの前に現れる。
そんな確信がある。

それこそが、満たすものだということを、ナツは知った。満たす意味は知らなくとも。
それを手に入れているだけで、ナツにとっての結末は、充分なハッピーエンドである。


そしてもう一つ。
それでも、皆を拒絶しても、世界を否定しても、全てを切り捨てても
「私は変化することが怖くて、衝突することが怖くて、消失することが怖くて
 私は何もしないただの静かなクズだ」

なんちゅー台詞!!!
そこに気付いた事の方が、余程価値がある。
ちーちゃんが居る「救われた場所」よりもずっと価値のあるものだと私は思う。

満たされたと、今は感じないかもしれないけれど
この先、ナツを一人前にしていくだけの大きな財産だ。

それを手に入れられたナツと、それを知らないちーちゃん。
果たして満たされたのはどちらか、と作者は空から笑う。


****

トータル的にも、欲の対比としても充分洗練されており、面白い。
前半の物欲やら自己顕示欲やらを露骨に描き出していた一見健全な人間感情に対し
後半怒涛に畳み掛けるナツの内面的な欲望は、陰惨で薄汚いもののように見えるが
自己価値や本質に気付き始めた芽吹きの瞬間とも言える哲学的思考は
私には、大変美しく映る。

小さな盗難という事件を用い、ここまで存在の本質を突き詰めるなんて、想像もしなかった終幕だ。


最後に双方がそれぞれ手に入れたものは、ヤケに純粋で、切ない。
その余韻を、白とも黒とも付けないでフェードアウトするラストシーンも、秀逸だ。
未来は見せてくれない。


余談としては、クラスの中の不良少女と思われる女の子が、例のクライマックスで
「ちょっとくらい足りなくたって、どうだって楽しんで生きていけるだろ」
さり気なく流された、この台詞こそ
世の中をササクレ立って苦しまない、最大の答えなのだと思う。
欲望に忠実であればあるほど、人は苦しむのだ、暗に言われてもいるようだ。

「私らも、もう少しすれば大人だ。欲しいものは自分で手に入れられるようになる。楽しみじゃねぇか」
ある意味、一番被主人公だったのに
一番、青春漫画の正規主役であった。イイ奴じゃん。藤岡さん。この漫画の唯一の癒しだよ・・・w



えーっと。
多くの人に勧めるタイプの物語ではないです。(知らずに済むならそれに越したことは無いから)
でも、少しでも、多面体で構築される世界のこの側面を見たことがある人ならば
素通り出来ない何かを感じ取れるだろうと思う。
個人的には、その部分を切り取ってくれただけでもこの作品に評価したいという思いに駆られた。
読後にこんな痛くもない腹を探られているような、むず痒さを感じたのは初めて。(苦笑)

描かれている世界は確かに無慈悲で残酷だが
でも私に言わせればまだ何処か生ぬるさの残る日常と結末は、それだけで幸福の中に在る。
鮮やかな青春群像を切り取ったものではなくても
自己をなんとか正当化しようとして追い詰められていくナツの思考は、美しい。
美しく、残酷な事実を語る。

そんなナツの、どうにもならない現実を前にしたもどかしさと劣等感が
寂びれた田舎街の、一過性の抒情と合わせて、静かに語られる。
その内包した陰惨な熱は、一度たりとも外へ発散されることなく、ナツの胸に仕舞われるのだ。

普通、漫画や小説ってのは――人生というものは、外部と関わってこそ、なんぼでしょうが
ナツの中で、それは燻り続ける。


すっげぇえぇぇぇー・・・・・・。もう溜め息しか吐けない。
なんという美しさ。


思春期・青春・恋愛をモチーフにする作品は、第二次成長を絡めて変化を描きやすいからか
落としてからハッピーエンドという起承転結を造り易いからか
漫画にしろ小説にしろ、ベタなテーマで、実に沢山ある。
しかしそういうのは大概
一過性の甘酸っぱさを謳ったり、社会制度を知る前の自己との落差を越過するものだったりと
多くがポジティブ解釈をされ、この先待ちかまえているであろう膨大な未来を享受する、
所謂、成功者の物語になっている。

そういうのも爽やかで胸にくる時もあるし、素晴らしい作品は沢山ありますが
この作品が取り上げているものは、その逆であるということが、物珍しく
そして、まるで自らの自伝のように、ここに共鳴する。

果ては、自分は特別じゃないだけでなく、普通にすらなれなかった、あの感覚。
その惨めさを、今ここに、ひしひしと呼び起こしていく。



世の中誰もが成功者じゃないし
誰もが順調な道を歩める訳でもない。
いつか、どこかで、世界のその側面を目にしたことのある人、
或いは、少なくとも、世界にはそういう側面があることを知っている人。

マイノリティは確実に存在し、決して無ではないのだ。
そんな感じ。
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COMMENT


素晴らしい感想だった
ふらっとグーグルでちーちゃんはちょっと足りないの感想を調べて見かけました。
自分の抱いていた感情や感想をまとめるのにすごい参考になりました。
かなり熱のある感想で相当時間もかかったことでしょう。
自分の知る限りあなたの感想が最も素晴らしい感想です!
一読した段階でこれは名作だな〜と思っていたのですが、さらに素晴らしい作品だな〜ッて思います。
ぜひちーちゃんはちょっと足りないと一緒に読んでほしい感想ということで
見つけてよかった
ありがとう!
2014/12/22  | URL | くるたみ #- [edit]


このたびはご訪問ありがとうございます。パチの方も押してくださったようで感激です~。(//∇//)

わ~~~~過分なお褒めの言葉も頂きまして・・・・/////恐縮です。<(_ _)>
こちらこそ、読んで下さり、本当にありがとうございます!!
この記事はかなり真面目に書いたのでめちゃめちゃ報われました。(笑)
ええ、もう、時間はすっげぇ掛かりました!当社比3割増しくらいv


すっごい物語でしたよね~。この漫画を読んだ方と感動を分かち合えて嬉しい!
分かる人には、胸の奥からエグられる、鋭い切り口でした~。仰る通り、名作!
2014年度の「このマンガがすごい!」第一位になったのも、充分納得ですよね!

巷に溢れているような、優等生的でお利口な作品は、正論だと思うし、ポジティブになれますが
結局上から目線であることは否めず、所詮、成功者の言葉であり
そこへ辿りつけない数多の声もあるという事実を無視していて
でも、大抵の人はちゃんと階段を登れるから、この作品は中々薦めにくくて・・・(^^ゞ

でも、サイレントマイノリティは確かに存在してるよって私も言いたくて思わず上げた記事でした。
書いて良かった!(*///∇///*)


私も、もやもやする感覚は未だ色濃く燻っておりますが、それが心地良く、度々読み返しては
再び仰け反ってますw
くるたみさまの感情や気持ちを整理するのに、なにかお役に立てたのなら幸いです。
この度は色々本当にありがとうございました!
2014/12/23  | URL | もくず #- [edit]


これがオススメ本!?
というのが、前半のストーリーを読んでいる時の考えでした。よくある日常系のストーリーなので半分眠りながらダラダラと読んでいたことを思い出します。

中盤以降のストーリーは・・・眠気が吹き飛び、一気に読み進めてしまいました。

読み終えた後、もやもや感が半端ではなかったのですが、あなたの解釈に出会えて良かったです。
2015/01/05  | URL | #- [edit]


わわ!そうなんです~!私も一緒です~。o(≧y≦*)o
前半のあのノリは、この作者ファンには抵抗ないのでしょうし
こういうテンションが好きな人には前半さえも脂の乗った作品であると評価するのでしょうし
素直にコメディとして楽しめるのでしょうが
どうも私もこの手のノリが苦手でして・・・(^^ゞ
ちっとも面白くなかった・・・・っていうか、ノリ切れなかったです・・・。(^_^;)

転換期を迎えるあの瞬間から
じわじわとくる暗雲に、序盤のイライラなどすっかり吹き飛び呑まれて行きました~。
凄い引力がありましたよね~!o (●>H<●)o


2014年度の第一位に輝いたということは
後半のあのモヤモヤ感に共感したという人がたくさんいたということなんですかね?
それはそれで衝撃です(笑)でも嬉しいですよねv

似たような感動を覚えた方とお話が出来て嬉しかったです。(^^)
この度はコメントを残して下さり、ありがとうございました!
2015/01/05  | URL | もくず #- [edit]


自分もハッピーエンドで良いと思います。読み始めからは想像もしていなかったラストシーンは、感動でナツと一緒に涙きじゃくりました!読後にこの感動を共有したいとネットを開いた所、バッドエンドとの評価が多くてビックリ…!自分の感動は間違っていたのかとナツの如く不安になっていた所、このブログに出会えてホッとしました(^^; 自分も人生で何度か精神の臨界点を経験しましたが、ナツはそんな時にちーちゃんという親友を得た事だけで十分幸せだと思います(^o^)/ そして、こうやって評価が分かれてそこに議論の余地が残る事も含めて、名作だと思いました。的確な解説と評価、どうもありがとうございました(^^)
2015/01/07  | URL | こちどー #- [edit]


そうですね。多くの解釈が出来ることも、読者へ様々な感情を植え付けたことも
全て評価されるべきことですよね。(*^_^*)

ただ、ラストについて、同じ見方をした方がいたんだって分かり
私もちょっとホッとしました~。(=´▽`)ゞ
アマゾンでの評価を見た時、みなさん一様に作品を高評価をなさっていまして
その点については私も大変同感なのですが
どちらかというと、バッドエンドということに心を抉られていらっしゃるようで(笑)
同じく、ビックリ!でした!
え~っ?!あれ見て、悲劇になっちゃうの~?と。
確かに境遇は報われないままだし
何とも悶える部分で終いにされちゃうし(笑)
ちーちゃんも真実は知らないままというサディスティックな温度差が痛いのは確かですが。(>_<)

仰るように、精神的に限界を垣間見た(笑)人間は
それでも傍に居るということに多大に心理的価値を見出しちゃいますよね~。
同時にちーちゃんの強さも見えるというか。

勿論、見方は人それぞれですので、そこも含めて名作だったと私も思いますv
ただ、私だけ異質なのかとちょっと・・・wって思っていました。
同じ見方をしている人が他にもいらっしゃって嬉しい!↑(●^Д^●)乂(●^Д^●)↑
良かったぁ~。


また、拙く、ネガティブな解釈に偏った文章でお恥ずかしいのですが
レビューに対しても好意的に捉えて頂き、過分なお褒めのお言葉をありがとうございました。
こちらこそ、コメントも残して下さり、嬉しかったです。(〃▽〃)
2015/01/08  | URL | もくず #- [edit]


このマンガがすごい!にならび
この感想がすごい! があれば1位にあたる記事でした!
2015/01/24  | URL | あだながちーちゃん #- [edit]


なんて可愛いニックネームなのv

褒めすぎです~//////(照れてます)
ありがとうございます。
少々読み難い部分もあったと思いますが、読んで頂けて(ハズカシイけど)嬉しいです。
とても奥の深い漫画でしたよね。
2015/01/25  | URL | もくず #- [edit]


はじめまして。
このマンガはすごい大賞といことでミーハーに手を取り、先ほど読み終えこの胸にかかえたモヤモヤ、胸をえぐられる気持ちが自分の中で言葉にできず、しかし今日はもう一度あの漫画を開く勇気もなく、感想を拝見させていただきました。
大変勉強になりました。
どうにも一度読んだだけでは私には理解力なのか視野の狭さなのかこの胸にかかえる気持ち、衝撃なのか、感動なのか、恐怖なのか、すら整理がついてなくて、とてもとてもとても助かりました。
一言お礼が言いたくてコメントさせていただきました。
目線の角度、解釈等非常にそうゆうことかと勉強になりました。感想がこんなにも面白いとは!!!

また日を改めてちーちゃんはちょっと足りないにチャレンジしてみます。
誠にありがとうございました。
2015/02/03  | URL | よっしー #wnqcvxa. [edit]


はじめましてー!この度はご訪問くださりありがとうございました!

感想、面白かったですか!うっわー!嬉しい!
読み辛い部分もあったと思いますが、そう言って頂けて感激です!
感想の切り口は、自身の経験に准えてしまったため、大分ネガティブ解釈でお恥ずかしいのですが
ご理解していただけると私も救われます~・・・(笑)
お礼だなんて甚だ恐縮です!こちらこそ、何らかの手助けになれたのなら幸いです~。(^^ゞ


読後が重たくて、私も初めて読んだ時は何とも言えない気持ちにしばらくフリーズしてました~。
お気持ち、すっごく良く分かります。
正にそんな感じでしたよ~。
今でも時々読み返しますが、読めばまたあの悶々としたラストにぐるぐるぐる・・・。(ーー;)
私も、一人で抱えるのが辛くて吐き出すようにこの記事を書き出しました。


こちらこそ、コメント残して下さり、本当に嬉しかったです!ありがとうございました!(^^)/
2015/02/05  | URL | もくず #- [edit]


読み終わって、ネットでの読者のレビューを見たく、こちらの文章を読ませていただけました。

完全に心にぽっかり穴があいてしまっている中で読ませて頂いたのですが、、良い考察と感想でございました。ごちそうさまでした。

毎度この作者には心を掻き毟られ、やられてしまいます。。

序盤、この作品はよつばとの様な日常系漫画なのだと思いました。正直面白くないと思いました。

が、管理人様同様の気持ちになりました。見事に予想斜め上を作者はやってくれました。

面白くないと思った時点で作者の勝ちです。最高の漫画でした。
2015/03/10  | URL | ミッチー #aIcUnOeo [edit]


この度はご訪問下さりありがとうございました!
何か纏まりのない記事でお恥ずかしいですが、どこか共感して頂けた部分もあったようで
ホッとしておりますv

心にぽっかり穴があいてしまっている気持ちは私も同感でした。
ほんわか日常4コマのノリで始まる序章は
とてもラストの凄惨な結末を予感させるものではありませんでしたよね。

ホント、展開が見事に予想斜め上で
『日常が面白くない』、と思った時点で、作者の勝ちですね。
でもその退屈な日常こそが現実なんですよね。
なーんか世知辛いものが胸を過ぎります。
そういう視点や描き方が、とにかく気に入っています(=^・^=)


私は、この作者の他作品を読んだことがないのですが
皆このような作風なのでしょうか。
ちょっと、他のも読んでみたい気もします。(^^ゞ

この度はコメントありがとうございました!(^^)/
2015/03/10  | URL | もくず #- [edit]


はじめまして、感想読ませていただき、なるほど!と思い投稿しました。

ラストは確かにバッドエンドだと感じましたが
この感想を読んで、ナツは最後にちーちゃんに救われたんだ、と。
旭や藤岡とはもう仲良く出来ないだろうけど、この辛い経験でどん底まで落ちた最後に
ちーちゃんに救われて、この先少しずつでも変わっていけるかもしれない。
そう思えるようになって、読後にもやもやしてた心が晴れました。
本当にありがとうございます。

因みに私はこの物語の舞台になった街に長らく住んでましたが、中学の頃はナツが言うようにつまらない町だと思ってましたw
住んでる人の雰囲気もあんな感じでしたし、団地だらけで坂が多くて、レジャー的なものは本当にジャスコか海位しか無い、でも電車で20分位移動したら物が溢れる都会に出られる、何だこの差は!と。
潮風が吹く落ち着いてて人も優しくて住みやすい町なんですけどね。
旭と藤岡たちが歩いてたアーケードの入り口や3話のジャスコの入り口がまんま一緒で一目で分かりましたw
2015/05/15  | URL | ネコ先生 #- [edit]


はじめまして~!この度はご訪問くださりありがとうございます~!<(_ _)>
この漫画凄く好きなので、コメント頂けて嬉しいです~。ヾ(´▽` )ノ


ああ、やっぱり初っ端はバッドエンドだと感じましたか~。

あのラストに関しては、確かにバッドエンドだと感じる方々が多勢で
ナツに同情的な目線を持った方でも
その程度じゃナツの救いにはならないというような解釈しているみたいですね~。
この二人の共通認識がないですから、孤独感が拭えず寂しいっていうのも尤もです。
その辺の哲学的考察もまた、この漫画のスゴイ所だと思います。

でも仰いますように、ちーちゃんが傍にいる事実だけは現実で
この先少しずつでも救われていく可能性は示唆されていることになりますからね。

ちーちゃんの性格描写から言って、ナツの真実を知っても離れていくことはなさそうです。
完全対等になっていないところがまた、ザワザワさせられますよね~。
ホント、読後感はハンパなく強烈ですよね~、一部の人間にとってw
私の長すぎのレビューが何かの助けになれたなら幸いですv



> この物語の舞台になった街
なにィィ!
そうなんですか!?うわぁ~、なんか夕陽が凄く綺麗な街って印象です~。Σヾ(゚O゚)ノ
漫画の世界を疑似体験なんて、ちょっと特別な感覚です。(@0@ノ)ノ
2015/05/16  | URL | もくず #- [edit]


中学生くらいの多感な時期には大体誰しもナツくらいの自意識の暴走は
経験すると思うし、友人との交友関係が変に拗れてしまって
それっきり切れてしまうなんて事も別段珍しく無いと思う。
それって不幸でもなんでもなくて
現実では極々ありふれた話だと思うんですよね。

ただ、その「現実」を漫画というプロトコルに落とし込むと
酷く悲劇的に見える(見えるだけでよくよく考えてみると別に悲劇でも何でもない)。

この作品は意図すれば醜いもの、見たくないものを完全に排除できる
漫画という媒体の特性を上手く利用した作品だと思う。

この先ナツはもしかしたら旭や藤岡なんかと疎遠になったりするかもしれないけど
それも別に現実に置き直して考えると極々ありふれた話で別に不幸って言うほどの不幸でもない。
2016/03/02  | URL | #- [edit]


確かにコマンド自体は平凡なことですけど、同じ条件を与えられた者が真逆の結果を享受するという
社会に於いての辛辣な有様を伝えていると思ったんですけど。
大人が深読みしすぎて過大解釈しているとも言えますが。
現実、そういうことは起こり得えますし
だからこそ潜在的に己に置き換えて心打たれたのかなぁと思います。
2016/03/05  | URL | もくず #- [edit]


いや、悲劇でしょう。
それを認めるか認めないかだけの違いがあるだけで。
2016/04/09  | URL | #- [edit]


沢山のコメントを頂き恐縮でございます。
あまりに数が多くなってしまいましたので
申し訳ありませんがこの辺りでこの記事へのコメントは停止させて頂きます。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
2016/04/10  | URL | 管理人より #- [edit]


夜中にこんな本読むんじゃなかった、と後悔していました。感想といえば同じ考え、共感できるものばかり探す人間でしたが、あまりの身に覚えのありすぎる彼女たちの日々を読み、なんとかこの焦燥感から救出してくれる考察はないかと探していたんですが、この感想に早いうちに巡り会えてよかったです。四時ですが今からなら幾分か眠れそうです。どうしてもナツのその後に暗い影しか見えずぐるぐると回転して睡眠を受け入れないわたしに、少しばかりの希望をもたらしてくれました。ナツも満たされていて、この話はバッドエンドなんかじゃなかったんだな、と思うことができそうです。救われました。本当にありがとうございました。
2017/07/20  | URL | 児童液 #- [edit]
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