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Like Sugar&bitter chocolate

邦ドラマと映画の甘くてちょっとほろ苦い感想雑記。けっこなんでも飛び出すごちゃまぜブログです。お暇つぶしになれば幸い。ヾ(≧∇≦)

 

ちーちゃんはちょっと足りない 阿部共実著 感想 

タイトルからしてちょっと残忍である。
読後に改めて振り返れば、そんな視点であるから主人公は苦しいのだ。

タイトルに騙されてはいけない。絵柄に騙されてもいけない。冒頭4話までのつまらなさにめげてもいけない。
中盤からの斜め展開が冴えわたる一品である。


色んな意味で悶々とする漫画でした。うわーってなる。
とにかく強い我の物語。
何故そんなに欲望に忠実であれるのだろうと、羨ましくさえ思ってしまう。
自分の十代は、こんなにも見境なしであっただろうか。

この頃の年代って、もっと拡散的で
一つが報われなくても、同時に様々なものを求めてもいて
もっと色々なものに目映りするとも思うんですが、登場人物たちは平等に欲望に忠実だ。
(最も、一度捕われてしまった欲望には、稚拙なまでの盲目的執着が
回避出来ないっていうリスクは、確かにあるかも)


逆に言うと、何がこんなにも彼女たちを満たさないのであろう。
自らの枯渇するような感情を、こうも際限なく主張出来るのであれば
それだけで、彼女たちは充分な幸福の中に在る気がする。
少なくとも、私は、こんな風に自我を解放する生き方はしてこれなかった。
欲しいものを欲しいと言うことは、抑制されていた。

そんな、自制と欲望の歪みを、思う存分曝け出す漫画である。


そんな風に、ただ一つの飢餓を、焦る様に訴えているからこそ
ここで描かれる青春時代は燃焼し
物語としては、その狂気染みた末路が煮詰められていて、素晴らしい。
同時に、思春期を超えた大人に対しても
目まぐるしいまでの毎日が与えられず、燻ぶり、その何もかもが駄目だという絶望感や劣等感が
妙に胸に迫る造りになっていると思う。

この物語は、ある意味、欲に捕われた少女たちの顛末だ。
二つの結末を見せて、読者に問い掛ける。「何を以ってあなたは満たされるのか?」

油断して軽い気持ちで読み進めていったから
読後に知らしめられた、胸の中に残るこのモヤモヤ感が、もう!もう!ぐわってなる。
胸を強く締めつける。


ただ―――ーそういうテーマ的な部分は息を飲むのですが
物語(漫画)的には少々詰めが甘い。
そういうテーマを意識していないと、全体的に手緩くて、日常に呑まれて、ぼやんと終わる。
なら、もっと鮮烈な堕落の世界を見せてくれても良かったのではないかとさえ思う。
堕落していく末路そのものが、テーマじゃないからでしょうか。
そうしたらもっと大々的に傑作と評価できたんですが。

飽くまで、この作品が面白いのは、その内容そのものではなく
作風とテーマであることは、確かだ。

ちょっと子供っぽく平坦な絵柄なので、表紙を見ただけで敬遠する人が多数いる気がする。
でも、中身はまるで裏切る内容です。


具体的な感想。

この作品の一番凄い所は、そのタイトルだと思った。
ちょっと色々未成熟な、ちーちゃんと呼ばれる女の子を、描いたものですよ、という
作者からのメッセージかと思いきや
これは、彼女をちーちゃんと愛称で呼ぶ、タイトルにすら出ないもう一人の少女の枯渇の物語だ。

しかも、物語も、冒頭4話はこのちーちゃんという女の子を主人公として
彼女の視点で話が進められていく。
そのサディスティックな切り口が、もう既に残酷だ。
世界は“私”が中心ではないのだ。


おかげで、読み手もすっかり騙されていく。

前半。
少女たちが自覚して足りないと騒ぐのは、物欲だったり自己顕示欲だったりと
とにかく我が強い。
ぎゃあぎゃあ騒いでは、あれが欲しいだの、これが足りないだの、やかましく、美しさの欠片もない。
この辺が実はちょっとイラつく(笑)
ギャグテイストで軽く明るく、話は進むんですけど
そもそも私はこういうノリがイマイチ得意ではない。単純に不満を逆撫でされるだけだった。

・・・がっ!

やがて気付く。
世界の主役は、結局、ちーちゃんみたいな極彩色の女の子なのだ。
良くも悪くも、世界の、クラスの中心は彼女にあって、みんなの注目を引き、
記憶に残ることで存在を肯定される。

ごく普通の、何も特徴を持たない、平凡な少女は
主役にすらなれないし、記憶にも残らない。
大差ないということは、この狭い空間では要らないと同義である。
ナツの立ち位置は、直接的なイジメよりも抉る。


そういうことを、ほんの少しの感情の温度差で見せ付けてくるから、しんどい。
あまりに些細なことなので、誰も気付けない差だ。
でも、確かに差は存在していて。
ワザと嫌ったり、いじめたりしている訳ではないから、残酷なのだ。


タイトルに含まれている「足りない」というキーワードはすごく重要で
その、本当に足りない部分(メインテーマ)を隠すためであろう、ちーちゃんには
露骨に足りないものを付与させている。
お小遣いが8円しかないとか、テストの点数が23点だとか
色んなものが“足りない”
本編では一度たりとも触れられてはいないが、恐らく知的障害の女の子で
情報も文化も遅れている地方の田舎で、質素で地味な学生生活を送っている
そんな平凡な中学生の、ほんの数ヶ月のお話が舞台だ。

恐らくそれもまた、巧妙に計算された設定なのだ。
そういう即物的なものばかりに読者の視点を持っていかせて
ラストのオチを見せた時、静かに問い掛けるんだ、「足りないものは満たされたか否か」

本当に足りないものは、そんな物欲ではないと持っていくための
壮大な嫌味なのだと思う。

中盤、高価な物を身に着けることで、世界が変わると本気で期待したナツの淡い気持ちを
日常と言う名の変わらない風景が打ち砕く瞬間は、身に余る。
無下に不発に終わらせるそのネタは、決して人的な作為などではない。
誰も何も悪いことはないんだ。
誰に否定される訳でもない、無関心という仕打ちが、実に過酷で
己の傲慢や、本質の薄さなどと思い知らされる。



そしてようやく物語はクライマックスへ。

本作メインの、ちょっとした出来事――盗難――が起きた。(こんな程度がメインなんだよ!)
ここから、ようやく、本当の主人公の物語が始まる。
一見、軸がブレたかのようにも捉えられるこのシフトは
実は、その前4話が壮大な下地になっていたことは、後になって気付く。


ちーちゃんは、ナツのためにお金を盗み
ナツは、欲しくても、その瞬間までは常識的に我慢していたのに
「あげる」と言われた時、それが盗んだ金であることを薄々感づきながらも、受け取ってしまう。

最後の誘惑に、勝てなかった?
いや、自分が惨めだからこそ、差し出されるこの位の褒美は許されると思っただけだ。
「私だってたまには好きな物を買ったっていいでしょう?」
その自己肯定する根拠が、息詰まる。
傲慢な我儘などでは、決してないんだ。そこまで彼女を追い詰めた背景が別にある。
それこそが、前半ダラダラと描かれた、あの4話だ。

そのための布石として、前半、足りないという表面的なものが、色々紹介された訳か。
その欲を、足りない足りないと明るくホザいている間は、健全だが
一旦引き金を引いてしまうと、欲は濁り、歪み、取り囲む・・・。

思えば、散々イライラさせられたことさえ、作者の思う壺だった。
素直に笑えた人にも、イラついた人にも
そこに反応した時点で、とにかく下地が整えられてしまっていた。くっそぅ。成程~。


ただそれだけで、ナツの運命は大きく変わって行く。

その盗難事件を発端に、二人の欲望には、正反対の結末が用意される。
表だって、欲を隠さなかったちーちゃんは、ベクトルが外向きに。
裏で密かに罪を呑み込んだナツは、ベクトルが内向きに。
その道が、真っ二つに分かれていく。

ここからのナツの、加速度的にネガティブになっていく発想は、もう堕落と自壊に染まり
たまんない。
怒涛のように歪んでいくナツの被害妄想から卑屈な思考まで
よくもまあ、的を絞った言葉をここまで並べ立ててくれました。

思考回路が否定的な人って、正しくこんな感じである。(私のことだがw)

でも、盗みが許されると思っていた訳でも、褒美の品が欲しかった訳でもない。
本当は、報われない自分を、少しだけ満たしたかっただけなのだ。
それの、どこが罪と言えるだろう。

でも、欲は確実に浸食する。内向きに。



私に言わせれば、ちーちゃんも、ナツも、全然足りなくない。

でも、ちーちゃんを、傍から見ていて
「この子(ちーちゃん)はちょっと足りない」などと感性を持っているから
ナツは暗闇から抜け出せない。
他人のことを、ちょっと足りない、なんて目線で見ているから、本質が見えないのだ。
確かに、その角度からの視点では、ちーちゃんは「足りない」かもしれないが
別の角度から見れば、充分満たされている。

傍に居てくれる友人がいるし、無視されないし、気に掛けてくれる。
何より、運命もまた、彼女の味方だ。
最後まで読めば、ちーちゃんこそ恵まれた環境に居ることに読者も気付かされる。

でもナツは気付けない。

ちーちゃんはちっとも足りなくないということに気が付かない。
同時に、自分自身の本当に足りない歪んでいる部分と驕りに、目が行かない。
ナツに、唯一足りないものがあるのだとすれば
この俯瞰する視点だ。


この辺の、じわじわとした説得力が、とにかくすごく上手い。
孤独と、異物感を強めていく思考が、とにかくすごい。
特に強調して露骨に描いている訳じゃないだけに、深層心理下で理解させられていく感じ。
繰り広げられている、下らない日常など、所詮「表向き」なのだ。



その明暗が天と地ほど別れた、二人の末路。

ちーちゃんの方は、あからさまにバカ正直なだけに
主犯であるにも関わらず、叱られ、謝罪し、許される、という
単純でありながらも社会システムの、健全な規分律を享受していく。

実行犯であるにも関わらず、ごめんなさいと一言伝えれば
仲間は許す。世間は許す。
そうして、誤解も解けるし、絆も出来る。
それは、さながら、良くある青春群像であり、甘酸っぱくも爽やかで、王道路線な結末だ。
ここで終わっておけば、何てことはない、一つの青春漫画で充分通る。

が、そこにナツの姿はない。

ナツには、その機会は与えられなかった。
実行犯ではないにも関わらず、一番の、罪の底へと堕とされていく。

ならば、何故ナツはタイミングを逃したのか?
盗んだ金を使ったことで後ろめたくなり、自分を責めている、ちゃんとした女の子だからだ。
その重さから、彼女は、罪から逃れることも、受け容れることも、出来なくなってしまった。
・・・・生真面目なんですよね、要は。
そして、保健室に逃げ込んでいる内に、チャンスは過ぎ去って行ったという悲劇。

それをまた、誰も伝えないし、話さない。
この顛末って・・・・っっ!!!

何この、ナチュラルに非道な感じ!
誰も悪くない。でも確実にナツの心を抉るこの熾烈な仕打ち。

罪の重さを知り、逃げ回ってただけのナツが、救済の機会を失い
恐らく、盗難という罪の重さを今ここで初めて知り
また、恐らく盗んだことよりも叱られたことにショックを受けただけのちーちゃんが
無邪気にも陽の当たる道を赦される。

自覚しているがために、苦しみが生まれる。
ちーちゃんは自覚がないから幸せで居られる。自覚ある者に救いはないのか。
人の幸せってこんな所で決まってると?

なにそれー!!
惨い・・・・むごすぎて、辛い・・・。
運命って時に過酷だ。


じゃあ何?
ナツは保険室に逃げ込まなければ良かったのか。
ちゃんと授業は受けましょうってこと?
逃げている人間には、救われる価値もないってこと?
傷ついたナツが悪いってこと?

結局、レールの上に乗っかっている優等生だけには優等生的で利口な救済が与えられる。

色んな意味で、エグイ結論を叩きつけられる。
騒動の後になって、母はお金をくれるけど
そのタイミングの悪さと仕打ちの辛さも、身に染みる。
「もうさ。遅いんだよ。こんなのもういらないんだよ」

この、タイミング的にも最悪な非道さ。
惨めになり、心を突き刺さされ、抉られていくナツの境遇が、もう静かに息を詰まらせていく。
運命もまた、レールの上に乗っている人間の味方なのだ。


直前の、ちーちゃん側の仲直りが、実に青春劇らしく清らかに眩しく鎮静化していっただけに
その対極にある彼女の人間感情が、反比例的に見えてくる。
この対比のさせ方が、芸術的だ。

子供らしい、直前のクライマックスで終わらせておけば、実に爽やかな物語であっただろうに。
そこで敢えて終わらせない。
模範的な規分律が、ここで一気に熱を帯びた人間の話になって、温もり(人間臭さ)を出し
実に生々しくドロドロした社会の話との鏡像に擦り変わる。
なんて手法!


ナツを、業や欲に塗れた、薄汚い少女だと、人は思うか?
醜い感情を赤裸々に内包し、鬱屈としながらも、打算で生きる彼女を、卑しいと思うか?

「どうせみんな私が嫌いでしょ」「私はすべてに否定されているんだ」

彼女の底知れぬ孤独と渇望を、彼女の強欲と自己責任して処理するなんて、出来ない。
この、変われなかった少女の、救われなかったもう一人の少女の行く末で締めくくられるラストは
あまりに可哀想で残酷な気がして
直前の爽やかな友情物語など、今となっては酷く陳腐にさえ思わせる。
社会はそうして構築されているのだと、機械的な規律を見せつけられただけのように写る。

罪を犯したら償えば良いんでしょ、と安易に結論付ける数多の他作品の隙間を縫って
罪を抱える少女のその後の方を描いたことで
逆説的な哲学が見え隠れする気がした。



そのラストシーン。
議論の別れるところだとは思うが、密林のレビューでは「バッドエンド」だという解釈が多いが
本当にそうだろうか?
私には、この温い生活における、主人公にとっての最大のハッピィエンドだったと思える。
この辛しょっぱい幸せは、人生でたった一度訪れる青春の、最大の贈り物だ。

繰り返しになりますが、ナツも、本当は全く足りない女の子ではない。
学校と言う閉鎖的空間で、常に傍に居てくれる存在が居るということが
どれだけ幸せなことか。
約束も、言葉もなくても、なんとなく傍に居るという存在が
どれだけ貴重で、どれだけ満たされるものか。
物欲的に足りないものばかり目移りしている幼い視点では
この貴重さは分からないんだろう。
その意味では、確かにここで言う幸せとは、客観的なものでしかない。

クラスで友達もいなく、孤立していた私にとっては、ずっと、喉から手が出るほど欲しいものだった。
その意味では私も、確かに飢える程に求めてもいたのだ。

救われたちーちゃんと、救われなかったナツ。
そこに相互理解はなく、相対的な大差もない。

双方誤解したままで、でも、とりあえず今は、隣に居る。
ちーちゃんは変わらずナツを『認識』してくれるのだ。他のクラスメートと違って彼女だけは。
この先、ちーちゃんが真実を知り、ナツがちーちゃん側の事情を知る日が来ても
恐らく、ナツが逃げようとしても
このラストシーンのように、まるで簡単に、まるで何でもないことのように
恐ろしくも容易く、ナツを救ってくれる。

「ナツ!」って呼んで、ちーちゃんはナツの前に現れる。
そんな確信がある。

それこそが、満たすものだということを、ナツは知った。満たす意味は知らなくとも。
それを手に入れているだけで、ナツにとっての結末は、充分なハッピーエンドである。


そしてもう一つ。
それでも、皆を拒絶しても、世界を否定しても、全てを切り捨てても
「私は変化することが怖くて、衝突することが怖くて、消失することが怖くて
 私は何もしないただの静かなクズだ」

なんちゅー台詞!!!
そこに気付いた事の方が、余程価値がある。
ちーちゃんが居る「救われた場所」よりもずっと価値のあるものだと私は思う。

満たされたと、今は感じないかもしれないけれど
この先、ナツを一人前にしていくだけの大きな財産だ。

それを手に入れられたナツと、それを知らないちーちゃん。
果たして満たされたのはどちらか、と作者は空から笑う。


****

トータル的にも、欲の対比としても充分洗練されており、面白い。
前半の物欲やら自己顕示欲やらを露骨に描き出していた一見健全な人間感情に対し
後半怒涛に畳み掛けるナツの内面的な欲望は、陰惨で薄汚いもののように見えるが
自己価値や本質に気付き始めた芽吹きの瞬間とも言える哲学的思考は
私には、大変美しく映る。

小さな盗難という事件を用い、ここまで存在の本質を突き詰めるなんて、想像もしなかった終幕だ。


最後に双方がそれぞれ手に入れたものは、ヤケに純粋で、切ない。
その余韻を、白とも黒とも付けないでフェードアウトするラストシーンも、秀逸だ。
未来は見せてくれない。


余談としては、クラスの中の不良少女と思われる女の子が、例のクライマックスで
「ちょっとくらい足りなくたって、どうだって楽しんで生きていけるだろ」
さり気なく流された、この台詞こそ
世の中をササクレ立って苦しまない、最大の答えなのだと思う。
欲望に忠実であればあるほど、人は苦しむのだ、暗に言われてもいるようだ。

「私らも、もう少しすれば大人だ。欲しいものは自分で手に入れられるようになる。楽しみじゃねぇか」
ある意味、一番被主人公だったのに
一番、青春漫画の正規主役であった。イイ奴じゃん。藤岡さん。この漫画の唯一の癒しだよ・・・w



えーっと。
多くの人に勧めるタイプの物語ではないです。(知らずに済むならそれに越したことは無いから)
でも、少しでも、多面体で構築される世界のこの側面を見たことがある人ならば
素通り出来ない何かを感じ取れるだろうと思う。
個人的には、その部分を切り取ってくれただけでもこの作品に評価したいという思いに駆られた。
読後にこんな痛くもない腹を探られているような、むず痒さを感じたのは初めて。(苦笑)

描かれている世界は確かに無慈悲で残酷だが
でも私に言わせればまだ何処か生ぬるさの残る日常と結末は、それだけで幸福の中に在る。
鮮やかな青春群像を切り取ったものではなくても
自己をなんとか正当化しようとして追い詰められていくナツの思考は、美しい。
美しく、残酷な事実を語る。

そんなナツの、どうにもならない現実を前にしたもどかしさと劣等感が
寂びれた田舎街の、一過性の抒情と合わせて、静かに語られる。
その内包した陰惨な熱は、一度たりとも外へ発散されることなく、ナツの胸に仕舞われるのだ。

普通、漫画や小説ってのは――人生というものは、外部と関わってこそ、なんぼでしょうが
ナツの中で、それは燻り続ける。


すっげぇえぇぇぇー・・・・・・。もう溜め息しか吐けない。
なんという美しさ。


思春期・青春・恋愛をモチーフにする作品は、第二次成長を絡めて変化を描きやすいからか
落としてからハッピーエンドという起承転結を造り易いからか
漫画にしろ小説にしろ、ベタなテーマで、実に沢山ある。
しかしそういうのは大概
一過性の甘酸っぱさを謳ったり、社会制度を知る前の自己との落差を越過するものだったりと
多くがポジティブ解釈をされ、この先待ちかまえているであろう膨大な未来を享受する、
所謂、成功者の物語になっている。

そういうのも爽やかで胸にくる時もあるし、素晴らしい作品は沢山ありますが
この作品が取り上げているものは、その逆であるということが、物珍しく
そして、まるで自らの自伝のように、ここに共鳴する。

果ては、自分は特別じゃないだけでなく、普通にすらなれなかった、あの感覚。
その惨めさを、今ここに、ひしひしと呼び起こしていく。



世の中誰もが成功者じゃないし
誰もが順調な道を歩める訳でもない。
いつか、どこかで、世界のその側面を目にしたことのある人、
或いは、少なくとも、世界にはそういう側面があることを知っている人。

マイノリティは確実に存在し、決して無ではないのだ。
そんな感じ。
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Category: book-extra

Thread: 漫画

Janre: アニメ・コミック

tb 0 : cm 19   

セカイの果て4巻 牧野あおい 

少女向け漫画らしいベタなハッピーエンドを諦めにも似た気持ちでスタンバっていたので
まず表紙が思うほどポジティブでないことにびっくりでした。
最後は笑顔のツーショットでしょー。フツー!(笑)何故涙?未だ涙?
でも中身を読んで納得。ナルホド。
確かに手離しではしゃげる内容ではありませんでした。

特に意外性のある結末じゃないけど
でも結構好きです。こういうラスト。
変に夢見たり強引に幸せ見せつけたりワザとらしいハッピーエンドよりずっと素敵。
けっこ気に入りました。(*^-^*)


未来を信じられない女の子を全力で押し出してあげた清廉な想いと
それを受け取った女の子が歩き出せる細くも強靭な結末は
とても爽やかだった。

逆に独り地獄へ堕ちていってしまうように見える河口は
あずさと違って周りに捨てられないものが沢山ある。
それらを捨てきれなくて彼だけは元の場所へ戻るけど
同時にそれは自分独りで罪を全部被ってしまうことにもなる訳で
支えてくれる人がいるとはいえちょっと鋭角的な結末だった。

それを人を殺した報復というなら対価として正しいのかもしれないけど
彼らにそこまでの罪があったのかと問われるとねー。(ーー;)
不起訴になるだけマシと取るべきなんだろうが。

そんな彼を、今度こそ救える唯一つの方法は
もちろんあずさが傍にいることだけであって
罪を償った上であずさも手に入れられた結末は納得もいく。
それが「キセキみたいな世界の果てがある」って表現するセンスも
愛らしさと透明感があった。
ビーズみたいな可愛さだ~。


何よりね~・・・約束の卒業式をようやく迎えこの街を出ようとする寸前に
真相に気付いた者たちから追手がかかり
全校生徒の前からカケオチみたいにあずさを攫って行く河口くんがかっこいーわーw
。(≧0≦●)。。(●≧0≦)。
こういう“連れだしてくれ願望”って女の子あるよねーwわかるーw
ツボすぎる展開~w(乗せられたーw)ヾ(≧∇≦)ノ

そこからドラマティックに急速に物語は動きだし
そして誰もが想像した通りであろう江ノ電まで二人で辿りつく。
くうぅぅぅ~~っっ!!!!これこれっっ!o(≧y≦*)o
来たぁあぁぁぁ!!!
やっぱこー来たかー。別れのセレナーデ~❤

この辺の流れはもう予想通りの想像通りで定番をきっちりかっちり描き切ってくれました。
そしてついに本物の江ノ電を見れる瞬間は
正に“いつかこの街を出ていける日”の象徴だった。

どうせ逃げきれない。でもせめて最後に本物の江ノ電が見たい。
お互い口に出さず寄り添って電車に乗る二人に本当は終着駅なんかない。
ただ旅の終わりを予感させ
忌まわしい記憶から綺麗なものだけを願う道連れは夢物語を模倣していて
メランコリックだ。

お互いこんなの夢だって分かっている、その二人の心中の温度差も
切なく孤独である。(ノД`)・゜・。

この時点で河口はあずさを一人送り出すことを決めているし
あずさも普通になんか戻れないって分かっている。
しかし同じ「もう二人で逢うことはない」って思いでも
あずさの絶望的な諦観と河口の覚悟はちょっと色が違うんだよね。

そこの温度差がラストの別れまでの二人の行為を妄言とさせていて
急速に現実が見えた時
あずさの切り離された絶望がより大きく開かれやるせない。
この現実に戻る瞬間が優しいキスで閉じられていって劇的だったー。うわー。

夢物語の幕引きを鮮やかに記憶だけ残して消えていかれたら
たまんないってー。(((p(≧□≦)q)))・°°・。

触れるだけの優しいキス❤こ・れ・ぞ・少女漫画の醍醐味w

しかもそこであずさが嫌だと言ったかつて周りに言われたという台詞を
今度は河口が口にすることで過去を払拭させ
“他の奴が言ったのが嫌でも俺の言葉なら聞けるよね”と言わんばかりのあの微笑み!
優しさーっ!なんて優しさーっ!
いっや~キレイっすねー!
キスシーンが乙女チックなのは少女漫画の十八番だもん!こうこなくっちゃ!o(≧∪≦*)o

ここであずさが河口の真意を気付いていようがいまいが
事実として受け止めきれない落差が
彼女を独り送り出し警察の元へ向かう河口の背中を逞しくみせていたし
その姿に翻弄され何も言えなくなった有明には
ちょっと胸がすく迫力があった。(まあ、愛だなw) ヾ(≧∇≦)〃

そんなあずさも後にようやく河口の全力の想いを受けとめて
感謝にも似た勇気を持って歩き出した姿は文句なしに爽やか。v(>ω<)v



ただその直前
「河口くんが全力で送りだしてくれた未来は河口くんのいない世界だった」と
淋しさを堪えきれないあずさに追い打ちをかけるように
「お前の人生とっくに終わってんじゃん」って責める言葉。
これもある意味事実なんですよね。(>_<)

それはそうなんだけど
あずさの願うものを考えればそれは最もなんだけど
そんな時に辛くても必死に生きてきた自分を知っててくれた人もいたっていうのは
救われるものだ。
さり気なく流されるシーンだったけどそこが結構胸に来た。
「ウソをつくのが下手な子ねって思ってたわ」っていう春日の母親の言葉は
どんな沢山の励ましてくれる言葉よりも
自分を認めてくれる言葉だろう。
あの時の自分を知っていてくれるっていうのは大きな支えになる。

その意味では河口には常に
いつも苦しんでいる自分を見ていてくれた祖父や世話を焼いてくれるみずほが居る分
あずさより幸せなんだろうな。
そしてあずさにとっては河口くん以外で初めて世界に自分を見つけてもらえた瞬間にも
なっている。

こういう人たちが背中を押してくれて初めて人は
「頑張れ」の意味を理解出来る訳で
そこまで辿りつくまでの物語の流れはすごく繊細だなと思った。


更にあずさは未来を何も信じきれないでいるけど
かつての友人が本当は何も怒っていないし恨んでもいないっていうエピソードを
さり気なく挿んでいることで
あずさが勝手に誤解しているだけで実は世界はもう少し救いのあるものなんじゃないかって
訴えている気もする。
最もそこまで追い込んだのは誰だよって話にもなるけど・・・・。
まあ、こんな深読みしちゃうようなタッチの漫画ではなかったんだけど。

ラストの河口とあずさの関係性の変化は
学生時代を寄り添い支えあい補いあった二人が
お互いの必要性と共に居る価値を噛みしめる究極の愛の形だったとしても
学校という閉鎖空間から自由になるということは
コレから先のこと考えたら二人で閉じこもっていても駄目なんだよね。
閉鎖空間だからこそ補完し合うことが防御に出来ていたとも言える。

時期が来て舞台が変われば
河口に依存するあずさの態度は出会った当初に逆戻りしただけのようにも見えた。

卒業するならば自分らも次のステージ用のスキルを作りなおさなければならない訳で
それは「一人で生きられなきゃ二人でも生きられないんだよ」っていう
当初の河口の台詞を彷彿とさせる。

つまり共に居たいというあずさの願いは
閉鎖空間のみで通じるスキルだからここから先には弊害でしかなくなる。
そういう精神的な意味でも送り出した河口の愛情は
とても深いものがあったなあと思う。
一緒にいることだけが全てではないと悟ったんだろうけど
それでも離れなければならない結末は
まるで河口が自分へ課した殺人への贖罪のようでもあって
大分やりきれない。

あずさの断ち切れない想いがホームでの擦れ違いをより哀しく色付けしていて
別れをより切なくさせていた。。:゚(。ノω\。)゚・。
出来れば一緒に居られる未来が欲しかったよな~と
まあ私でも思う。
でも10年後に文字通りキセキみたいな世界の果てで再会するラストは
ベッタベタだなとは思いつつホッとした。


総合的な軸として広がっていたテーマとしては
人一人殺しておきながら加害者が幸せになっていいのか
或いは正当防衛だった殺人から幸せへ前向きになるだけの理由は何か
その辺の矛盾も
片方が片方を送り出すという行動に因って綺麗に仕舞われたような気がする。
加害者も被害者遺族もみんなが納得した上での未来になったのは
不幸中の幸いとして許容範囲だ。

その中で有明先生だけ煮え切らない想いを抱えているのも
深みがあって興味深い。

そう!もう少し掘り下げて欲しかったのがこの有明先生の行動だ。
このヒト最後まで本当に何も分かっていなかった。
「あの子たちの罪は誰にも助けを求める勇気も持てなかったこと」?
なにそれ。
二人をそこまで追い込んだのはアンタ達じゃないか。
そっち側の人間がソレを言うのは狡い。
大人なのに、教師なのに護ることなど頭になかったじゃないか。

少なくとも田沢先生は歩み寄ってくれた。
だから河口だって田沢には本音を言えたんだ。

自分が潔癖でいたいからと周りにそれを押し付けただけで
有明の行動は最後まで自己中心的であった。
「正義を語る資格なんかない」など言える義理じゃないだろうに。
正義の前に人の気持ちが殺されるなら
正義なんて何の意味もないんだ。

大体河口とあずさには
春日が憎くて恨んだまま死に分かれた訳じゃない負い目がある訳で
事情も良く知らない人間が簡単に正義という切り口だけで
人を裁けると思うなよ。まったく。

河口とあずさが許されると自覚するのは法でも正義でも社会でもない。
春日を殺したことではなく
生前春日とすれ違った隔たりが二人を追い詰めている訳だ。
だからこそ春日の母親の言葉があずさを救う訳で
あずさの背中を押せるのも春日の母親の言葉だけというラストもまた
説得力が湧いていた。

結局有明がやったことは二人を追い詰めただけだった。
正しいと思っていても
彼が何かしらの生産性のある事を成し遂げられた訳ではなかった。
人を救うのは正義や社会性などではなく
時には倫理さえ冒涜した利他的な行動なのかもな~。


面白いのは同じ殺人という事件を見ても
田沢のように背景まで見透かせる人と
有明の様に平面的な客観的視点しか持てない人もいるという事実だ。
一概に社会的規範で判断することが真実を見出す訳じゃないんだなと
これまた思った。(だからそんな深読みするような漫画じゃないんだけど!)


「いつかきっとキセキみたいに辿りつく日がくる――――幸せな世界の果てに」
もうそんな夢物語など信じれる年じゃないし
世の中には綺麗なものなんてないと知っている。
そんなことは少女向け漫画としては体裁を保ってキレイなメッセージになるのだろうが
ちょっと甘い結論だよな~とは思う。
それでもキセキみたいな出来事が私にも絶対起こらないと証明することもまた
出来ないのだと
そう思った。


前巻までの感想がコレ

Category: book-extra

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Janre: アニメ・コミック

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セカイの果て 牧野あおい 感想 

なーんかどんどん救いの無い展開になっていってるぞー。
語られる言葉も悲壮感(不幸感?)たっぷりだし
下手に希望を入れずに描いている辺りがなんだか返って妙に気に入ってしまった。
こういうテーマを読者層や掲載誌カラーなどの理由で中途半端に扱われると萎えるが
今の所無理の無い展開で進んでいる。

少女漫画なんて滅多に読まないのだが
久々にちょっと面白いかもと思ってしまった(^^ゞ

2巻が出ていた時点でこの漫画に出会い、結構私的に良い手ごたえを感じていて
先日3巻がようやく出て読んでみたのだけど、やっぱり悪くない。
テンポも軽快だし下手な小細工をせず愛するという行為が裏目に出てしまう運命が
実に巧みに描かれていて感情移入もしやすい。
少女漫画らしいチープさや詰めの甘さも多少はあるけど
全体的な構成は悪くない。
東野圭吾作品に似たようなモチーフがあったような気もするけどなw

何より驚きなのが
この手の内容でありながら掲載誌が「りぼん」だったりする。
えーっっ!!!???マジで?
いいの?イマドキの小学生ってこんなの読んじゃうんか!σ\(゜□゜*)/

扱っているテーマがテーマなだけに
もう軽はずみな着地点で誤魔化して欲しくないんだけどなあ。
むしろもっと高年齢対象の雑誌に掲載して本格的に彫り込んでほしい漫画である。



具体的な感想を~

まず1巻。出だしはモロ少女漫画。(^^♪
黒髪のストレートロングの大人しい美少女が主人公で
それを助けるヒーローがまたイケメンというwww
おめめパチクリ。瞳きらきら。
絵柄は幼く大人では抵抗持つ人もいるかもしれん。

もちろん二人ともワケありなんだけど
この時点ではそれは所詮平凡な事情。(後から振り返ればもうホント平凡)

儚げの美少女が頼りなさげで守ってあげたい感じで
ピンチに表れる少年も快活ではないが頼りになる感じ。
掴みはOK。

そしてその二人がひょんなきっかけで言葉を交わし交流を持つまでの流れは見事だ。
テンポ良く要点を押さえている。
この辺はさすが少女漫画って感じ。
こういう王子様的展開って王道だしツボを押さえた小慣れた印象を受けるw

特に終電の後の線路で星空をバックに夢を語り口づけを交わすシーンは ←ベタw(*≧m≦*)
非常に綺麗。
印象的な演出となっておりこの先の展開にも重要なシーンとなっている。

で、このまま二人で手に手を取り合ってクラスの中で孤独に戦っていくのかと思いきや
一気に急展開!!(@_@;)ひょんな運命の悪戯で人殺ししちゃったよ!
ええぇぇぇ???マジで殺人????!(゚Д゚||)

とか思ってたら
しかもその不可抗力で掴み取った自由を奪われるのが嫌で
更にその殺人を自殺に偽装。
どっひゃーっっ!!!Σ(゚Д゚ノ)ノ

で、その罪から逃れきれるか、という戦いの物語なわけで・・・・( ̄Д ̄lll)


事故で処理されたかもしれないのに偽装しちゃったからもう本当に犯罪だ。
でもその時主人公が言う台詞が重いんだよ。
だって正しいことをしてきたって「ずっと意味がなかったじゃない」
「正しいことが無意味なら嘘をついていこうと思った」

うーん・・・・なんかすげぇ。Σ( ̄□ ̄lll)
(これを小学生が見ちゃう現実もすげぇ。)

それに主人公千田あずさが殺人を偽装してまで守ろうとしているものは
自分の保身などではなく親への愛情だという部分も痛い。
もう親を泣かせたくなくて嘘を吐いて微力ながらも守ろうとしている直向きさは純粋だから
殺人行為に反発は感じない。
親が心配しすぎる余り子供を追い詰める側面もあるんだという切り口はちょっとイタイね。
愛するが故に大事なものが見えないのは親もまた同じなんだ。
「普通」を押し付けると子供の行き場を奪ってしまうリスクがあるんだな。

そのためあずさ自身も自己矛盾を抱えることになり
全てに嘘を吐かなきゃならないから居場所も無くなっていく。
心安らぐ場所がなくなっていって追い詰められた末に深みにはまって行く過程は
物事の最悪の事態を示していていちいち息が詰まる。


だからあずさは同じ罪を共有している同胞、河口隆に過剰に依存していく訳だけど
見方を変えるとちょっとコワイ女の子だ。
彼を好きな余り盲目的になったり或いは何をしでかしてもおかしくない危うさもある。

でもそんな彼女が
「ひきかえに私が一番ほしかったもの」を守ろうと覚悟を決め
徐々に強くなっていく姿には凄い好感と興奮を感じた。
「この世界は正しくあれば幸せになれるわけじゃない。それならば良心を捨てようと」
という台詞は
間違っているけど間違いだなんて誰が彼女に言えるんだろ。

その間違いが結果的に周囲には「正しい」道のように見えていく皮肉もまた
巧く誇張していると思う。


一方、河口隆も一旦良心の呵責に耐えかね自首しようとするも
それまた運悪く祖父を一人残してはいけない事態に陥り
じーちゃんのために、と自首を思い留まってしまう。
あーあーあー゚・(ノД`)ヽ

それもまた他人を思いやる優しさに満ちた行為である。
そんな愛情は間違っていると
その純粋な気持ちにこれまた誰が苦言を呈せるというのか。


こんな中、秘密を抱えて居場所がどんどん無くなって行く二人が言う言葉がまた重いんだ。
「ずっとひとりだったから世界でふたりぼっちでも嬉しかったんだ」
うおー。・゚ ゚・(p>□<q)・゚ ゚・。

なんか切ねー!

結局このあと警察に追われたり教師に疑われたり大人を巻き込んでの逃亡劇になっていくんだけど
巧い戦略を仕掛けていく頭脳戦がある一方
これでもかこれでもかと不運な災難が重なっていって・・・
なんかもー見てらんねー!(/□\*)
なんつーか、もういいじゃんって思う(>_<)
ホント息が詰まるわ。

社会の対応の粗とか細かいツッコミ所はそれこそもうどうでもいいぃぃぃ~。


でもこの漫画の一番の魅力はそこではなく
人物が多角的に描かれていることだ。

表面的に見えている部分は一部であって誰にでも別の色んな側面があるものだと表現していて
多角的な視点は読者に物語の是非を委ねている風でもある。
一概に悪人VS善人とか犯人VS正義という構図にしていない設定が巧いと思う。
一概に誰が悪いとか言えないから読んでいて憎しみが湧いたりしないんだよね。単純に。
どこまでもどこまでも切ないだけのお話だ。
なかなかシビアな物の見方をした世界観であり
こういう部分も個人的に好物だ♪


殺された元彼だって自業自得じゃーんとか思いきや
後に表面だけでは判らなかった意外な一面が死後露見してきて
一時の感情で死んで当然と思う人にだってやっぱり背景には色々な顔が合って
死んで良い人間などこの世にいないのだと暗に訴えているようだ。

生きていなければ間違いも正せないんだな。彼も自分も。


また間違いだと分かっていながら結局罪を犯した生徒を庇って退職させられる田沢先生もな。
彼もまたいい人だー。
「金八先生みたいになりたかった」ってww・・・・なんかそーゆーの、わかるよ。o(*⌒―⌒*)o
最後の最後に自分の意思で守れた姿はカッコ良かった。
罪を庇うなんて間違っているけど
庇うことで彼が感じた達成感って大切なことなんじゃないだろうか?

敵に回りそうで味方になったこのキャラ設定も巧いセッティングだと思う。


対して面白いのが対照的な位置づけのカリスマ教師有明先生。
自責の念とはいえ一見クリーンな良識を通しているようでいて
身勝手な正義を振りかざしているに過ぎない。
何とか自殺ではなく他殺であった証拠を掴み世の中の論理を正したいのだろうけど
理屈に合った正義を通して果たして今誰が幸せになれるというのだろう。
それが見えていない時点でこの人もまた偽善者である。

歪んだままの世界の方がみんなが幸せになれる気がする今の状態で
他所で叫ぶ正義が非常に陳腐に見えてくる。
物語が加害者視点ってのも大きいけど。



あーもー色々すごいぞ。
戦うのはもうクラスメイトのイザコザレベルじゃねーよ!びっくりだよ!
本当に世界(社会)と戦うんか!

これ・・・・この先どーなるんだろ???

犯罪を肯定するようなエンドにする訳ないから最後は捕まるんだろうが
所詮少女漫画だからありきたりなハッピーエンドで終わるんだろうけど
なんかもうここまでくるとそう単純な結末は用意していない気がする。

死んでしまった元彼春日哲平が周囲に与えていた微妙な影響力を掘り下げれば
事態は収束に向かうのだろうけど
もう語る口を持たないし
その春日もまた母親の愛情に飢え苦しめられた被害者であった事実は
事件を複雑にしている。

犯罪とはいえこのまま見逃して「解放」してあげたい気にもなってくる。
罪を償うと言ったって
じゃあ一体彼らは何の罪だと言うのだ・・・・(ノД`)・゜・。
大切なものを守っただけなのに。

結局みんな誰かを大事にしたいだけな所が非常に感傷的だ。
そういう愛情が空回りしている所が見ていてちょー切ない。
その武骨な必死さが印象的だった。
いつの世も人が人を想う瞬間ってやっぱ穢れ無い。

彼らの戦いが無意味であるような結末は止めて欲しいなあ・・・o(TヘTo)
うーむ。もう少し成り行きを見守りたい漫画である。


エンディングは江ノ電に乗って逮捕(別れ)という流れになりそうでちょー泣ける。既に。
それすら叶わない流れならもっと泣くー。。o゜(p´□`q)゜o。


そーいや以前こんな感じのサスペンス漫画を脱落した経験もあったなー・・・・。
ピース?だったっけ?
自殺した後の交友関係を洗っていく内に意外な真相が見えてくるっていう漫画だったんだけど
結構面白かったんだが単行本発売が遅すぎるのと展開もトロすぎるので
4巻くらいで脱落してしまった。

これもまた読んでみたくなったなー。

Category: book-extra

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